「すぐエアコンを入れますから、曽根崎さんはここに座ってください」


私は大慌てでクッションをフローリングの床に敷くと、エアコンのスイッチを入れ、設定温度をいつもより低くセットした。


それにしても、私は何てバカな事をしてるんだろう。エアコンは直ってるからまだ良かったけれど、こんな狭くてみすぼらしいアパートなんて、曽根崎さんには不釣り合いも甚だしいし失礼だと思う。エリートで、仕立ての良さそうなスーツをビシッと着込んでる彼には……


たぶん曽根崎さんもそう思ってるだろうから、お茶を一杯飲めばすぐに“帰る”って言うと思う。私もその方が有り難いし。


と思ったのだけど、なぜか曽根崎さんはネクタイを首から抜いてしまい、寛ぐ態勢になった。しかも、


「シャワーを使わせてもらおうかな」


などと言い出した。


「そ、それはちょっと……」


と言いながら、ローテーブルに冷たい麦茶をコトンと置き、私は曽根崎さんの向かいにお姉さん座りをした。


すると曽根崎さんは、麦茶を一気にゴクゴクと飲み干し、今度は、


「では、君が先にシャワーを浴びるといい」


と言い出した。なぜ曽根崎さんはそんなにもシャワーに拘るのか、私には全く理解出来なかった。