素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜

「ほら。例のイケメンの彼氏が来てもさ、そっちの音は全然聞こえないから、こっちのも聞こえないんだと思ってたわけよ」

「な、何言ってんのよ。聞こえるわけないじゃん」


阿部和馬の言ってる意味がようやく分かったけど、それはとんでもない話だった。涼と私が……だなんて。


「なんで?」

「なんでって、彼とはそういう事はしてないからに決まってるでしょ?」

「え? 嘘だろ?」

「なんで私が嘘つかなきゃいけないのよ?」

「だってさ、仮にも男と女が同じ部屋にいて、それはないんじゃないか?」

「彼とは友達だったのよ!」

「“だった”って、お前……」

「結婚しちゃったのよ。どこかの可愛子ちゃんと、半年前に……」

「そうか。どうりで最近は見ないなと思ってたんだ。って、おい、泣くなよ?」

「な、泣いてなんか……」


と言ったものの、瞬きをしたら目から涙がポロッと零れ落ちた。


「来いよ。無理しないで、俺の胸でうんと泣け」

「バッカじゃないの? 彼とは友達だって言ってるじゃん」


実は本格的に泣きそうな雰囲気だったけど、阿部和馬のふざけた仕草で涙が引っ込んでしまった。ふざけたんじゃないのかもしれないけど……