そう呟いた彼の声は、確かに震えていた。
「東京着いたら連絡して」
「うん……」
「夏休み、すぐに会いにいくから」
「うん…」
俺、東京行ったことなくてずっと行ってみたかったから楽しみ、って笑ったのは渓斗君の優しさ。
私はその言葉が渓斗君の優しさで、強がりだって知っていながら、騙されたふりをした。
そうして私は再び、東京に戻った。
──飛行機の中で目を閉じながら、これからの事を考える。
大丈夫、今までと同じ。
何回も転校してきたから、もうなれてる。
ただ、脳裏を掠めるのは、もう過去へと追いやったはずの人影。
……ううん、気にすることなんてないよね。
確かに彼はきっと、まだ東京にいるだろうけど、会う確率なんて低いものなんだから。


