渓斗君の声に、渓斗君の表情に。
「……恵梨が転勤族っていうのは恵梨から聞いてたから、まあ覚悟はしてたんだけどこんな早いなんて思ってなくてさ……」
「私も、思ってなかった……」
こんなにも早く、引き離されるなんて。
ほんの数ヶ月の、儚い幸せだった。
やっと幸せになれるって、思ってたのに──。
「……次が、最後の転校になるの」
「え?」
「お父さんが本社に戻れるらしくて、転勤生活もこれでお終いだって」
皮肉だね。
もし本社が九州にあったら、今の所が最後の転校先だったかもしれなかったのに。
ずっとこのまま、ここに居られたかもしれなかったのに。
「……もう転校の心配がないなら、恵梨にとってはいい事、だよな……」
「──そんなことないよ……っ」


