「大丈夫。ゆっくりでいいから」
「……っ、実は、東京に戻ることになったの……」
優しい声に後押しされて、それだけどうにか吐き出せば、心にのしかかっていた重りが、少し軽くなったきがした。
しばらくの、沈黙。
顔をあげて渓斗君の表情を確かめるなんてとてもじゃないけどできなくて、俯いていると、やがてゆっくりと渓斗君が声を紡いだ。
「……そういう、ことか」
その言葉に顔を上げれば、渓斗君は泣きそうな顔で笑ってた。
「もしかして別れ話されんのかな、とか色々考えたりもしてたんだけど──」
そこで渓斗君は、くしゃりと前髪を乱した。
「これはこれで、結構辛いな……」
「……っ、」
──泣きそうになる。


