「恵梨?」
転校を告げられた翌日、ボーッとしていると、渓斗君が首を傾げながら、横から私をのぞき込んできた。
「あっ、な、なに?」
「いやボーッとしてるから。大丈夫?」
「う、うん……」
ちょっとボーッとしてた、と苦笑いしながらパッと目線を落とす。
なんだか後ろめたさがあって、渓斗君と目を合わせられなかった。
「……どうしたの」
すると、ワントーン低くなった渓斗君の声に引き止められた。
歩きだそうとした私の腕を掴んで、引き止める渓斗君。
「大丈夫なんて嘘でしょ。なんかあったの?何、隠してんの」
「何も隠してなんか……」
「俺には言えないこと?俺の事、信用できない?」
「そんなこと──っ…!」
ないに決まってるよ!と渓斗君に反論しようとして、言葉を詰まらせる。


