それが例え、私を騙すための嘘だとしても、告白を断るというのはなんとも心苦しくて、私は嗚咽を漏らしながら涙をこぼした。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめん、ごめんね……
まるで呪文でも唱えるかのように何度も謝ってから、その場から逃げ出そうとした。──した、けど。
「……納得いかない」
ぎゅ、と握られた手は強さを増すばかりで、離してくれる様子は無かった。
見れば、渓斗君が怒ったような、悲しそうな瞳で、真っ直ぐに私を射抜いていて。
喉をぐっと詰まらせた。
「……俺の事、嫌い？」
ぶんぶん、と左右に首を振る。
「じゃあなんで無理なの？……なんで、泣いてるの」
ゆっくりと距離を詰められて、渓斗君の長い指が私の涙を掬う。
「俺別に、無理強いして恵梨と付き合おうとか考えてないよ？恵梨が俺を好きじゃないならそれでいい」
「……。」
「だけどさ、そんな風に苦しそうに何度も謝られても納得いかねーよ」
ふわり、と、鼻腔を渓斗君の香りが満たした。
抱きしめられたことに気付くのには、そう時間はかからなかった。
「……俺、頼って欲しいんだ。甘えて欲しい。俺の事好きじゃないならそれでいいから、それなら納得する理由くらい教えてよ……」
そんな優しい声で。
ポンポン、って優しく背中たたかれたら。
──もう限界だった。
