そうして告げられたのは、そんな台詞。
──一瞬、何を言われたのかわからなくて。
理解出来なかった。──もしくは、理解しようとしなかったのか。
「……え?」
「俺、恵梨が好き。……俺と付き合って欲しいんだ」
両手をぎゅ、と繋がれ、切なげな表情で懇願されて、胸が締め付けられる。
渓斗君が私を好きだなんて、信じられなかった。
渓斗君は明るくて優しくて、人気者で。──そう、木村君のように。
木村君を思い出した私は、じわり、と恐怖が心を満たすのを感じた。
また騙されてるんじゃないだろうか。
また、あんな辛い思いをするんじゃないだろうか。──そう考えたら……。
「ご、めんなさ……」
渓斗君の気持ちには、答えられるわけなかった。
怖い。
また裏切られるのが怖い。
好きになって、好きになりすぎて、傷付くのはもううんざりで。
あんなに痛いなら。
あんな、心がちぎれそうな思いをするくらいなら、もう恋なんて二度としなくていい。
そう思った。
「渓斗君とはお付き合い……出来ない……っ」


