沢森が転校してきてから、こんな風に沢森から話しかけてくるのなんか始めてで、目に見えて動揺してしまった。
だけどそれ以上に、じわりじわりとやってくる嬉しさ。
……やばい、嬉しすぎてにやけそう。
「何?どうかした?」
「いや、た、大したことじゃないんです、けど……あ、あの」
「ん?」
どんどん小声になっていく沢森に耳を近付けると、沢森は小さな声で
「……昨日は、あ、ありがとう、ございました」
と囁いた。
「それだけです!」と言って真っ赤になりながら自分の席へと戻っていった沢森。
対する俺は、沢森に耳を寄せる格好をしたまま、動けなかった。


