突然そう声をかけられて、地面に落としていた視線を上げると、そこには見覚えのある柔らかな笑顔の男性が立っていた。
あ、この人、隣に越してきた──つまり、沢森の身内か?
多分年齢的に、沢森の父親だと思う。
俺達が付き合ってるときは、さすがにお互いの親に紹介しあったりはしてなかったので、俺は沢森の父親がどんな人なのかわからなかった。
「……ども、こんにちは」
「ああ、やっぱり木村さんの所の息子さんだよね。よかった、間違ってなくて」
ニコニコと人当たりの良さそうな笑顔は、昔の沢森を彷彿とさせる。
「僕の娘が多分、君と同じ高校なんだけど。あ、沢森恵梨って言うんだけどね?」
「はい。……同じクラスです」


