なんだよそれ。そんなこと、一言も──


「……!」


そこでふと、冬になりだしてから、沢森の笑顔が時々陰っていたこと、進路の話を嫌がっていたことを思い出した。


……そうか、こういうことだったのか……。


「沢森は……」

「ああ、急に今日出発が決まってな……卒業式を出られないこと、沢森も寂しがってたよ」


結局、俺になんの一言もなしに、沢森は俺の前から消えた。


この時、俺と沢森を繋げていたものが、ぷっつりと跡形もなく消えたことを感じた。


……自業自得、だよな。


もっとちゃんと、沢森に好きだと伝えればよかった。


俺に罰ゲームだなんていって押し付けてきたあいつらにも、言えばよかった。俺は沢森に本気だったんだって。


本当に、本当に、好きだったんだって……。


「沢森……」


ごめん。ごめんな、沢森。


きっと沢森は、すごい傷付いた。

だって俺、知ってるんだ。気付いてたんだよ。沢森が心から、俺を好いてくれていた事。


だって俺が沢森を見る目と、沢森が俺を見る目は同じだったから。