卒業まで付き合ってくなんて当たり前だろ?俺は沢森が好きなんだから。
卒業式で振る?何言ってんだこいつら。
そこまで考えて、あ、と思い出す。──そうか、こいつら俺が嘘告で沢森と付き合ったのを、まだ演技だって信じてるのか?
……俺はもう、こんなに沢森に溺れてるのに。
「そのことなんだけど俺──」
「ていうか沢森も沢森じゃね?いい加減騙されてるって気づけばいいのにな」
卑下た笑いでそう言ったそいつらにさすがにイラついた俺が、「おい」と言い返そうとした瞬間。
──ドサッ……!
俺達の背後でそんな音が聞こえてきて、俺達は一斉にそちらを向いた。
そして俺は、身体中がすう、と冷えていくのを感じた。
「あ……」
か細く吐き出された声は震えていて、いつも俺に向けてくれていた柔らかな笑顔はどこにもなく、その表情は驚愕と怯えに染まりきっていた。
「沢森……!」
沢森がどこから聞いていたのかは、その表情を見れば一目瞭然だった。


