本当は、沢森はどこの学校志望してるのか聞きたかったけど、このころから度々見せるようになった沢森のどこか苦しそうな笑顔に、俺はいつも進路の話になると口をつぐんでしまうのだった。
沢森は、何故か進路の話をすることをやんわりと拒絶していた。
それがどうしてなのか、気になったのに俺は聞くことが出来なくて。
ちゃんと聞いてやっていれば──あんなことには、ならなかったのに。
「木村君、木村君」
「ん?」
二月のある日、二人で隣り合って下校していると、遠慮がちに沢森が話しかけてきた。
「木村君は、甘いもの好き?」
「甘いもの?」
どうしていきなり甘いもの?と首を傾げながら、「好きだけど?」と答えると、沢森は嬉しそうに笑った。


