だとしたら、なんて残酷な話だろう。
私はそんな前から、渓人君のことを傷つけてたの……?
「だから、言い出せなかった俺も悪いんだ。夏休みの時に別れよう、って言い出せなかったから、こうして恵梨を泣かせる事になった」
「そんな……っ」
「女々しいよな、俺。わかってたんだ。恵梨が誰といた方が幸せになれるのか……木村の話を、聞いた時から」
「木村君の、話……?」
どういう事だろう。
すると、渓人君は夏休みの時、木村君と二人で話し合ったのだと教えてくれた。
確かにそんな事を夏休み、言ってた気がする。
そこで渓人君は、木村君と私との間にある誤解を知っていたらしい。
「そう、だったんだ……」
「ごめん。俺の口から、誤解を解いておけばこんなに拗れなかったんだろうけど……俺、そこまでお人好しじゃないからさ」
そんなことない、と首を横に振る。
渓人君は十分、お人好しだよ……。
「正直、今すぐ諦めろって言われても無理だけどさ」
そう困ったように笑いながら、渓人君が私の頭をポンポンと撫でる。
「でも、俺と付き合うことで恵梨が救われれば、俺はそれで良かったから」
だから、少しでも救われてたなら俺はそれでいいよ。と笑う渓人君に、また涙が溢れた。