【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー





なんでそんな風にいったのかはわからない。


ただ、沢森と話す口実が欲しかっただけかもしれない。


でも沢森に「頑張れ」って言われたらやる気が出るのも本当。


「なんか沢森に言ってもらえたら俺、頑張れそう」


そう言うと、沢森は目をしばらく泳がしてから、眉を八の字にして、困ったように俺を見上げた。


その顔がほんのり赤いから、掴んだ腕を引っ張って抱き締めてしまいたくなる。


そんな涙目で俺のこと見て、俺をどうしたいの?


「……言ってよ」

「……が、頑張ってください」


敬語なのが少し残念だけど、その威力は膨大だ。


胸がきゅう、と締め付けられる。


「さんきゅ……頑張るわ」


うん、頑張れる。

沢森の言葉を思い出せば、頑張れる。


俺はそう心の中で唱えて、沢森の前髪にキスを落とした。


そしてぽかんとする沢森に小さく笑ってから、俺はその場を後にした。