私にはもう、渓斗君という大事な人がいる。 だから、お願い。 「好きだ沢森。もう一回、俺のものになって──」 もう、私の心の中に侵入して来ないで。 私の気持ちを、揺さぶらないで。 目を伏せた端整な木村君の顔がそっと近付いてくる。 これから何が起こるのか、私は直感でわかっていたのに、抵抗することができなくて。 ゆっくりと触れた、木村君の唇の柔らかさに。 私は逆らうことが出来なかった──……。