丁寧に説明してから、顔を上げると、少し蒸気した顔で木村君はボーっとしていて。
「木村君?」
「えっ、あ、おお」
ハッとしたような態度に、目を細める。
「……本当に聞いてました?」
疑うようにそう言うと、何故か木村君は困ったように笑って。
やっぱり聞いてなかったんじゃ、と言い返そうとした私に、木村君は口を開いた。
「なあ、明日もこうやって教えてくんない?」
「え?」
今、そんな話全然してなかったのに。
突然話題が変わって、目を丸くする。でも、「……どうしても嫌なら、いいけど」と少しさみしそうに言われたら、嫌だなんて言えるわけもなくて。
これが木村君の罠だってこと、わかってるのに。


