どうせならグイグイ行きたい、と思ってしまうのは人間の性だろう。
「なあ、隣座ってもいい?」
「!?」
さすがに沢森も驚いたのか、困惑したように俺を見上げる。
なんで?という言葉が今にも聞こえてきそうで、少し笑った。
「俺さ、期末英語がピンチなんだよ」
「……そうなんですか」
「だからさ、教えてくんない?」
沢森は頭が良くて、特に英語と国語はずば抜けていた気がする。
この前の中間の時も、上位者は順位が張り出されるんだけど、そこに名前が載ってたし。
「……私、教えられるほど頭良くないですし」
「そんなわけ無いじゃん。少なくとも、俺よりはいい」
沢森の返事も待たずに、沢森の隣に座ると、沢森は驚いたように肩を跳ねさせたけど、逃げたりはしなかった。
そういう小さな反応の一つが、嬉しい。
きっと転校してきたばかりの沢森だったら、俺を跳ね除けてでも逃げてただろう。


