彼女の小さな唇が紡いだその名前を聞いた瞬間、人違いであってほしい、なんて俺の願いは脆くも崩れ去ったのだ。
間違いない、あの子は──……。
俺が唯一愛してた──いや、いまでも愛してる、女の子だった。
沢森、と喉まででかかった言葉。
しかし今更その名を呼んだ所で、彼女が反応してくれる可能性は低いし、そもそも話すことばが見つからない。
沢森は俺に気付いているのかいないのか、一度もこちらを見たりしなかった。
……当たり前、だよな。
もし俺の存在に気付いてたとしても、きっと話しかけてなんか来ないだろう。
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