恵梨を裏切ってない証明なんて。そんなの──。
そんなの、要らないよ。
そんなの聞いたら、俺はどうしたらいいかわからないし、それに、怖い。
もし恵梨が考えていた事がすべて早とちりで、全部誤解で、なんてことになったら、恵梨はきっと戸惑う。
もしそれで、恵梨が木村の事をまた好きになってしまったら──。
そんな事を考えたら、ぞわりと寒気がした。
でもここまで聞いてしまったら、気になって気になって仕方ないし、聞かないわけにもいかないし。
意を決して口を開こうとした時に、タイミング悪く恵梨が帰ってきてしまって。
恵梨は木村を見ると、びくりと肩を震わせてから、逃げるように家の中へと入っていってしまった。
……逆にそこまで悪い方に意識されるのも、気に食わない。
──つくづく、俺はわがままな男だと思う。
恵梨がコイツのことを好きになるなんて論外だけど、コイツのことを嫌って逆に意識されるのも気に食わないなんて。
俺は恵梨の恋人って立場にいて、きっと目の前の木村からしたら、喉から手が出そうなほど羨ましいに決まってるのに。


