「好きならなんで傷付けたんだよ」


なんで、なんで。


あんなに心がボロボロになるまで。


怒りが爆発しそうなのを必死に堪えてそう言えば、バツが悪そうな顔で、木村は言いよどんだ。


だけどその目が、苦悩に揺れていて。

違うんだ、と叫んでいたから。


「……もしかして、俺と恵梨の知らないことがまだあるの?」


──俺もお人好しだ。

そんなこと聞かないで、こいつは最低な人間なんだと思い込んで罵倒してしまえば良かったのに。


知りたくもないことをわざわざ聞きに行くなんて、どんな自傷行為だと自分の善意に吐き気がした。


「沢森を裏切ってない証明にはなる」


──ドクリ、と血液が逆流しそうだった。