「……お幸せに」
向けられた祝福の声は、まったく嬉しそうなんかではなくて。
だけど憎しみが隠れているわけでもなく。
ただ、無機質な声でそいつはそう言うと、その場から去っていった。
それを暫く見てから、恵梨へと目を向ければ、恵梨は今にも泣きそうな顔で、あいつが去っていった方を見つめていた。
──なんで、恵梨まで傷ついたような顔をするんだよ。
あいつは恵梨を傷付けた男だろ。
「……もしかして今のが、恵梨が言ってた、恵梨のこと遊んだって男?」
答えなんてわかりきっていたけど、わざと直接的な表現でそう尋ねた。


