「──そんなことないよ……っ」
もっとここに居たかった、と。
渓斗君と離れるのは嫌だと。
恵梨が泣きながら訴えてくれたから、俺も少し、救われたんだ。
……ここで俺まで沈んでたらダメだ。
ちゃんと、恵梨を送り出さないと。
「俺、離れても恵梨のことずっと好きだよ……」
──行かないで。
そんな言葉は心の奥に封印しながら、俺は君の背中を後押しした。
恵梨が飛行機で飛び立ったその日、俺の胸の中はぽっかりと空洞が空いたかのようだった。
青い空に小さく吸い込まれていった、恵梨を乗せた機体は、ここに戻ってはくれども、そこに恵梨を乗せることはもう無い。
「恵梨……」
なあ恵梨、褒めて欲しいよ。
君の前では泣かなかった、俺のことを。


