恵梨の心を酷いやり方で傷つけた男。
こんなにいい子なのに、どうしてそんな裏切り方ができるんだ。
恵梨の事を強く抱きしめながら、姿の見えない木村を思い浮かべて、宙を睨みつけた。
恵梨の事は俺が守ってみせる。
その過去ごと、全部とかして。
そんな男の事は、忘れてしまえばいいんだ。
それから俺と恵梨は順調にお付き合いを続けていた。
恵梨もすっかりとこちらの生活になれて、段々と東京でのことは思い出として心の片隅に仕舞われていってるようだった。
でも、そんなある日。
恵梨が朝からボーッとしていて、心ここに在らずって感じだったから、どうかしたのかと尋ねれば、明らかに何かあったくせに、「なんでもない」なんて。
俺はそんなに頼りないのかと聞けば、そんなことはないと慌てる君。
「私の話、聞いてくれますか?」
その言葉に不穏な空気を感じながらも、俺は頷いた。


