そんな沢森の後ろ姿を見送っていると、何故かムスっとした土屋が目に入った。
「……何拗ねてんのお前」
「恵梨に話しかけんなよ」
「いや、何いきなり」
さっきまでちょっと穏やかな雰囲気に戻りかけてたような気がしてたのに、また一触即発の空気だ。
「恵梨、お前のこと気にしてた」
「……嫌がられての間違いだろ」
そんな俺の言葉も無視して、今頃頭ん中、お前のことで一杯だよ、と吐き捨てる土屋。
それならいいな、と思う。
沢森の頭の中が、俺の事で一杯だなんて、それだけでなんだか幸せな気持ちになる。……なんて俺も末期か。
「……じゃあ、とりあえずこれ渡しとく」
俺はスイカの袋を土屋に押し付けて、そのまま踵を返した。
これ以上ここに居る理由もない。
だけどその時。
「ちょっと待って」


