あそこで俺がどんな行動を取ったとしても、僅かだとしても、きっと恵梨は傷付いた。
でも──。
「沢森の事を裏切ってない証明にはなる」
それだけは言える。
俺は沢森を裏切ったわけじゃない。
そして、土屋が何か言おうと口を開きかけたとき。
「……木村、君……」
驚いたような声に振り向くと、コンビニ袋片手に、沢森が困惑した表情で立っていた。
「……久しぶり、沢森」
少し微笑んで見せると、びくり、と沢森が震える。
……まだ、怯えられてるのか。
「どうして、ここに……」
「母さんがスイカ持ってけって言うから」
まだ手にしたままだった、スイカ入りの袋を軽く掲げて見せる。
「そ、う……だったんですか。ありがとうございます」
沢森は俺の目も見ずに早口でそう言うと、俺の横を通り過ぎて、家の中へと入っていった。
その間際に、「渓斗君、それ受け取っておいて?」という伝言を残して。


