君の世界からわたしが消えても。


 わたしの胸にぶら下がるペンダント。


 それは、『必ずカナの手に渡るようにする』と、ミヅキと約束したものだ。


 でも、これがわたしの手を離れカナに渡るということは、ミヅキの死をカナに突きつけることを意味する。


 そういう意味を、わたしが込めてしまったから。


 形見以上の重さがあると言っても、過言じゃないかもしれない。

 
 わたしがこれを彼女のカバンの中から探し当てたのは、彼女のお葬式前夜だった。


 たしかそのペンダントは、ロケット式だったということを思い出して。


 その時のわたしは、カナが事故で負った怪我のせいでお葬式に出られないと思っていたから、良かれと思ってのことだった。


 このペンダントの中に、ミヅキのお骨を入れてもらおうと考えついたのは。


 お葬式にも出られない、火葬にも立ち会うことのできないカナに、なにかしてあげられないかと考えた結果だった。


 ペンダントの中には、真っ白な紙に包まれた、少量の砂のような細かい彼女の遺骨が入っている。


 そのまま形見としても持ち歩けるように。


 カナの好きな場所で、ミヅキとお別れできるように。


 中身をそのままにするか否かを決めるのは、カナだから。


 カナが少しでも納得できるようにしてあげたいと思ったから。