だけど、カナはもうとっくに起きているはずだと信じてた。


 信じて、疑わなかった。


 ミヅキのお葬式に来られなかったのは、怪我で入院していたからだと思い込んでいた。


 お母さんから、カナは入院していて来られないって聞いたから。


 わたしはこの時、カナの状態が本当はどうなのかを、詳しく知らされていなかったんだ。


 イチに連れられて着いた先は、総合病院。


 中を慣れた様子で進んで行くイチの背中が、いつも見てきたものより小さい気がして不安になった。


 カナはもう起きてるんだよね?


 死んでなんかいないよね?


 ぐるぐる回る嫌な考えに吐きそうになりながら歩き続けた。


 イチは、病院内の一番奥の部屋の前で立ち止まった。


 『314 夏目 奏汰』


 スライド式のドアの横、プレートには病室番号と、紛れもないカナの名前。


 扉を隔てたその中からは、ひとつも物音がしなかった。


 ゆっくりとそこを開くイチ。


 途端、聞こえてきた微かな音。


 “ピッ……ピッ……”と鳴る電子音。