君の世界からわたしが消えても。


 俺の話を黙って聞いていた葉月は、大きな目をさらに見開いて驚いたけど、そんな表情はすぐに崩れて、ふにゃっとした頼りない笑みを浮かべた。


 その笑顔の意味は俺にはわからなかったけど、たぶん葉月は俺が言いたいことをちゃんとわかってる。


 だから、葉月もなにも言わなかったんだろう。







「……もう、真っ暗だね」


 沈黙の時間がしばらく続いて、それを破ったのは言わずもがな葉月だった。


 辺りが闇に染まってからもうだいぶ時間が経つのにあえてそう口に出したのは、『そろそろ帰ろう』っていう葉月の小さな意思表示だ。


 昔からこいつはこんなふうに遠回しに言うから、最初はその言葉の意味なんか全然わからなかった。


 けど、今はもうわからないことを数える方が難しいくらい、こいつのいろんな面を知っている。


 知り合ってから、10年以上。


 それだけの長い時間を一緒に過ごせば、それは当たり前のことなのかもしれないが。


 その“当たり前”が当たり前じゃないことをもう知っているから、その時間の流れの速さに少し切なくなる。