君の世界からわたしが消えても。


「なに見てんの?」


「うわっ!?」


 空で埋め尽くされた視界の中に突然カナの顔が広がって、思わず声を上げた。


 びっくりさせないでほしい。


 本当に心臓に悪いんだから!


 バクバクと脈打つ心臓を手で押さえながら息をつくと、「そんなに驚くと思わなかった」なんて、カナが言う。


 悪いと思っていないような、冗談っぽいその軽い言い方に小さくため息を吐く。


 それを聞いたカナはケタケタと笑い声を漏らしながら、そのままイチとは反対側のわたしの隣に座った。


 その時、少し強めの風が後ろから吹き、わたしの長い髪を宙に運んだ。


 一瞬で風は止み、それと同時に笑い声も聞こえなくなった。


 うるさかった心臓の音も、だんだん静かになっていった。


 まるで、風が全部さらって行ったみたい。


 カナもイチも、なにも話そうとしない。


 心地いいようで、少し胸が苦しくなるような空気が、身体中にまとわりついた。