君の世界からわたしが消えても。


 カナにかけてあげる言葉が見つからなくて、俯いたまま歩く。


「……あの場所、行ってみるか?」


 だけど、静かな重みのある声で、わたしたちの数歩後ろを歩いていたイチが、唐突にそう切り出した。


 振り返って見ると、真剣な顔をしたイチがそこにいた。


 イチの言う“あの場所”は、きっとあそこだ。


 桜の、丘。


 わたしたちの思い出の場所。


 カナは、それがどこなのか、わたしたちにとってどんな場所であるのかをきっと知らないんだろうね。


 不安そうな顔で、ゆらゆら揺れる瞳を彷徨わせた。


 だけど、透き通った声で、「行ってみたい」と、カナは小さく呟いた。