君の世界からわたしが消えても。


 ……でも、その瞳にあった輝きはすぐに消えてしまった。


 隣に並ぶわたしに見えるのは、伸びた前髪の間から覗く、長いまつげが頬に落とす影。


 伏し目がちで、寂しそうで悲しそうな、カナの横顔。


「かな……」


「あーあ、なにも思い出せないわ!」


 名前を呼ぼうとしたわたしの声を遮るように、突然大きな声を出したカナ。


 無理してるのなんて、バレバレだった。


 苦しいくせに、それでも笑うカナは、見ていてすごく痛々しい。


「こうやって歩いてみたらさ、なにか少しでも思い出せる気がしたんだよなー」


 なんで、笑うの?


「けど、無理だった!」


 なんで、明るく振る舞うの?


 わたしたちに心配をかけまいとするカナに、心の中でそう思っても口には出せなかった。


「美月のこと、ちゃんとわかるのに。なんで知ってるはずの場所も、イチのことも、俺は知らないんだろうな」


 自嘲気味に口元を歪ませたカナに似合わないその表情は、ひどく儚げで。


 すごく、泣きたくなった。