君の世界からわたしが消えても。


 一生ミヅキとして生きるのは、わたしには無理だから。


 嘘をついてそれが暴かれた時、一番傷つくのはカナだし、だったら早くカナに伝えないといけない。


 クッキーだって、本当はそのための材料だった。


 小さな違和感にカナが気付いて、記憶を取り戻すきっかけになればいいって。


 ……だけど、わたしは直前でまた迷う。


 カナの記憶が戻る可能性と、戻らない可能性は半々。


 もしも小さなズレを生じさせたまま記憶が戻らなかったら、その時カナはどうなっちゃうの?


 カナのために焼いたクッキーが、破滅の材料になってしまう可能性は?


 記憶が戻っても戻らなくても、カナをいつか傷つけてしまうことには変わりなくて、どれが最善策なのかもわからない。


 想像しては、怖くなる。


 もう、大切な人を失うのは嫌だから。


 目の前で壊れていくのを見るのは、怖いから。


 ミヅキの時みたいに、大事な人が目の前で消える瞬間なんて、もう見たくない。


 傷つけてしまうことを、選びたくなかった。


 与えられた選択肢の中に、わたしの望む答えはあったのかな。


 そんな答えの出ない問いを考えて、悩んで時間は過ぎていっちゃう。


 ……時間は待ってくれないのに。