君の世界からわたしが消えても。


 カナの肩辺りを布団の上からぽんぽんと叩く。


 彼はなにも言わないし、微動だにしない。


 だけど、なんとなく気持ちがわかる気がする。


 だからこそ、わたしはなにも言わない。


 ……カナはたぶん、寂しいんじゃないかな。


 心細いと思う。


 気丈に振る舞っているのはわたしも同じだけど、それと同じくらい、もしかしたらそれ以上に、カナは無理して笑っているんじゃないかなって感じるから。


 すんなりと受け止められるはずのない“記憶喪失になった”という事実を理解して、周りを気遣うカナ。


 笑って、怒って、感情をあらわにするカナ。


 わたしたちが見ているカナは、表なのか裏なのかわからない。


 笑顔の裏に不安を隠しているかもしれないし、わたしたちが帰った後ひとりきりの夜に、もしかしたら泣いているかもしれない。


 ……たったひとり、暗闇の中で。


 以前となんら変わらない様子でイチと普通に会話だってしているけど、ちゃんと覚えているのはミヅキのことだけ。


 本当は誰かにすがりたくて、でも、できなくて。


 心は痛いんじゃないのかな。


 我慢してる?


 苦しくない?


 つらくない?


 そうやって聞けたらいいけれど、聞いてもカナは笑うだけだと思う。


 そんなカナにわたしがしてあげられることは、ただこうして傍にいて、わがままを聞き、温もりをあげることだけだ。


 カナに言える言葉なんて、なにもない。


 彼が必要としているものが言葉じゃないことを、わたしはなんとなくだけどわかっていた。