君の世界からわたしが消えても。


 こんなにもわかりやすく機嫌が悪いっていうのを態度に出すのが珍しくて、どうしていいのかわからない。


 というか、子供みたいだ。


 イチに目配せすると、お前がどうにかしろよとでもいうように、顎でくいっと促される。


 しょうがないなあと思って席を立ち、カナの枕元から彼を見下ろした。


 見えるのはこげ茶色の髪と、その隙間から覗く耳だけだ。


 そういえばカナ、髪の毛もかなり伸びたなあ。


 傷むことを知らなさそうなカナのそれは、ツヤツヤとしていてすごく綺麗。


 思わず触れたくなって、自然と伸びてしまった右手。


 それに寸前で気付き、わき上がった衝動を心の中に抑え込んだ。


 何度もカナの名前を脳内でリピートして、ミヅキを意識して、呼びかける。


「……奏汰」


 後ろを向いているカナがわたしの言葉に反応してかぴくりと動いて、さらりと髪が流れて揺れた。