君の世界からわたしが消えても。


 それに苦笑しつつ「ごめんね」と謝れば、「別にいいけど」っていう無愛想な返事が戻ってきた。


 なんだか、こんなこと前にもあった気がするなあって、過去の記憶がよみがえる。


 中学の頃、クラスの男子がなにか用事があってミヅキに話しかけただけでも、カナは怖さを感じる作り笑顔で撃退していたし、いつでもミヅキの傍にいた。


 そういうカナを近くで見てきたから、ヤキモチやきで独占欲が強いってことは知っていた。


 イチに対して嫉妬するような感情を見せたのは今が初めてだったけど、それは記憶を失っていることに関係あるのかもしれない。


「あ、おい、奏汰っ」


 ぼんやりと考えていると、聞こえてきたイチの声。


 珍しく焦ったその声にハッとしてそっちを向くと、カナがベッドを倒してもぞもぞと枕に顔を埋めていた。


「え、あ、ちょっと。どうしたのっ?」


「……拗ねてんだろ。お前のせいで」


「わ、わたしのせい?」


 無言の圧力をかけてくるイチに、もうわたしが悪いと受け入れるしかない。


「……やっちゃったみたいだね」


 わたしたちに背を向けて布団にもぐり込んでしまったカナを見て、そっと息を吐き出した。