君の世界からわたしが消えても。


 そもそも、なんでカナはいきなりこんなこと言うの?


 悶々と考えていると、隣から盛大なため息が聞こえてきた。


「……はあ。なにわけわかんないこと言ってんだよ」


 顔色ひとつ変えずにそう言うイチを、カナは不審そうに見ている。


「わけわかんなくないだろ。イチ、ずっと美月のこと見てるし」


 ふて腐れ、怒ったようにも聞こえる言い方をするカナの言葉に、一瞬ドキッとした。


 確かにイチに見られてるなーって思ったけど、それがほかの人にも気付かれるくらいのものだったんだ、って思ったから。


 というか、本人がいるところでこんな話する?


 ……まあ、今のわたしはミヅキでもあってハヅキでもあるから、なんとも言いづらいけれど。


「で、どうなの? 美月のこと好きなわけ?」


 わたしにはお構いなしで、なぜだか険悪ムードのふたり。


 彼らの仲裁をするのも巻き込まれそうで嫌だし、そっと息を潜めてできるだけ気配を消すことに努めた。


 この前わたしたちのことを冷やかしてきた大部屋のおじさんたちは、お昼ご飯の後だからかみんな眠っちゃっている。


 正直、誰でもいいから助けてほしい。


 話し声にもピリピリした空気にも反応せず眠りこけているおじさんたちが、今は心底恨めしい。