君の世界からわたしが消えても。


 そんなことを考えてぼーっと突っ立っていると、ふいに服の裾をくいっと引かれた。


「お前も座れば」


 そう言って、わたしの意識を現実へと戻したのはイチだった。


 カナも眉毛を垂らして、わたしを見つめている。


 心配させちゃったなあ……。


「美月、どうした? 具合でも悪かった?」


 そう言って心配してくれるカナに無理矢理笑顔を浮かべて、なんでもないよって笑ってみせた。


 イチが用意してくれていた椅子に腰かけ一息つくと、隣から強い視線。


 これはきっと、イチのもの。


「……大丈夫か」


 左隣から聞こえた低い声。


 それを言ったイチの顔を見ると眉間にしわが寄っていて、本当に気にかけてくれていることがわかった。


 核心には触れないけれど、その言葉からは彼なりの気遣いが窺えた。


 きっと、カナの前で気丈に振る舞うわたしを心配して、そう言ってくれたんだと思う。


 イチには迷惑かけっぱなしだなあなんて内心思いながら、いつも通り元気だよって、わたしはまた笑った。