君の世界からわたしが消えても。


 立ち話もなんだから、ということで、カナの病室に戻ってきた。


 当然のようにカナの隣に立ち、転んでしまわないようにと自然に手を差し伸べていたイチ。


 そう簡単に倒れたりしないから大丈夫だ、なんて軽口を叩き合う姿を見て、このふたりはいつの間にこんなにも打ち解けたんだろうと思った。


 電動式のベッドを起こしてそこに寄り掛かるカナの傍に、慣れた手つきでパイプ椅子を置き、平然と座るイチ。


 イチは相変わらずあまり自分から多く喋ったりはしないけれど、カナがそれを気にすることはない。


 彼らの間には以前のような空気が流れていて、とても穏やか。


 カナには記憶がないはずなのに、そんなことを感じさせないほどで。


 ……見ていてわかるくらいに、ふたりは“親友”だった。


 嬉しいって思う気持ちと相反して、どうすることもできない悲しさも一緒に込み上げた。


 記憶を取り戻したわけではないカナだけど、隣には本物の親友のイチがいる。


 そんなカナに、“ニセモノのミヅキ”なんか、いらないんじゃないのかな……。