君の世界からわたしが消えても。


「……嘘っ」


 わたしの口からポロリと出た言葉は、ふたりの耳にも入ったみたいだ。


 目が真ん丸になっているであろうわたしに、カナは照れ臭そうに微笑んだ。


「そんなに驚くことないだろー?」


 カナはそう言って、左手で頭を掻いている。


 だけど、驚かずにいられるわけがなかった。


 だって、カナが。


 つい3日前まではひとりで立つこともやっとだったカナが、ひとりで立って歩いているんだから……。


 傍には、車椅子も見当たらない。


 カナたちが歩いてきた方向には、リハビリルームがある。


 もう、病室との行き来も自分の足でできるようになったんだ。


 病院では走っちゃいけないなんてことも忘れて、カナのもとに小走りで駆け寄った。


「す、すごいね。もうそんなに歩けるようになったんだ」


 カナの目の前に立って見上げれば、嬉しそうに目を細めて彼は笑った。


 ……それと、今気付いたんだけど、カナ、身長が伸びたみたい。


 この前のリハビリの時と違い、真っ直ぐに立つカナを見て、そう思った。


 眠っていたとはいえ身体はもちろん成長するわけで、1年半の間にカナの肢体はすらりと伸びたらしい。