君の世界からわたしが消えても。


「純情だなー」


 人の良さそうなおじさんが言ったその一言に、ぴくりと反応したカナ。


 おじさんたちはそのカナの反応に、またゲラゲラと笑った。


 なにがなんだかわたしにはさっぱりわからないけど、どうやら新入りのカナは笑いのネタにされているみたいだ。


 というか、早く豆食べないと、お膳下げに来た看護師さんに怒られちゃうんじゃないかな?


「おーい、いい加減食べないと、もうすぐ食器さげに来るんじゃない?」


 お皿の中に残った7粒の豆を見ながらカナを促す。


「……なよ」


「え、なに? なんか言った?」


 カナが小さく口を動かした気がして、聞き返す。


 すると、真っ赤な顔のカナにじろっと睨まれた。


「うっ、いきなり触ったりとか、するなよ……っ!」


 まだ上手く声を出せないカナは、聞き取りにくい声で確かにそう言った。