「えっと……資格、資格……と」


二階にある書店は結構大きくて広い。専門書も豊富で、目的のものを探すのに苦労する。


大学受験の参考書や大学の過去問題を目にすると、ツキリと胸が痛む。


本当は……大学に行きたかったな。


本を読むことが好きだったから、文学部で古文の研究をしたかった。今さら言っても仕方ないんだけど。


今は高校を出たら大学に行くのが当たり前な時代だから、なんとなく学歴でコンプレックスを感じる。
学歴がその人の全てを決める訳じゃないけど、やっぱり大学を出ていれば取れる資格や就職等の選択肢が増えるのが現実。


逃げるように参考書のコーナーから離れ、近くにあった資格試験の本を手に取る。


趣味を仕事に、という煽り文句があって、自分の趣味は何だろうと考える。
本を読むことが好き……後はお料理かな。珍しい食材やお料理を見ると、ついついいろいろ考えて後で再現しようとするし。


(食物関連の資格は……主に調理師や栄養士……か)


栄養士は専門の学校に何年も通わなきゃならないし、調理師は実務経験2年以上か学校に1年以上通わなきゃ受験資格がない……か。


(でも……調理師を目指すなら私でも出来るかな?)


スーパーで10年働いてきたけど、資格試験の受験資格になるような働き方じゃなかったし。スーパーを辞めて飲食店に再就職する……とか。


(3月末にはマンションも出なきゃいけないし。いっそのこと寮があるお店やリゾート施設でも捜そうかな)