一瞬だけ静まり返った教室。グラウンドの野球部の声が聞こえた。 「──ご、ごめん…ね」 そんな中、ポツリと呟かれた小さな声。 その声は震えていて。 そんな彼女の頬をポタポタと大粒の滴が伝う。 菜月はそれを拭おうともせずに、ただ俺に謝った。 そんな言葉が聞きたいんじゃなかったのに。 違うよ、重ねてなんかないよって。嘘でもそう言ってほしかった。 そしたらきっと、信じたのに。 "晃希" 久しぶりに口にした名前。 菜月を二年前で立ち止まらせる──俺の双子の兄弟。