いつも通りの休み時間で、私はひとり小説を書いていた。


小学5年生頃から書き始めた小説は、いつしか私の心が安らぐ唯一のものとなっていた。


そしてその作品もいじめものばかりで、まるで今の自分がいる世界のようにも見えた。


今書いているのは、
『仲良し三人組みの中のひとりが自殺。その真相を突き止めるために主人公は独自に調べ始めるが、もう一人は主人公をいじめ始める』というもの。


挿絵は、隣のクラスで、以前バレー部で一緒だった楯山若葉にお願いをした。


OKしてくれるか不安だったけれど、若葉は「いいよ!」と言ってくれた。


私が小説を書いていることは、多分ほとんどの人は知らないと思う。


知っているのは、隣の席のアイツと…莉乃と、那美と、ルナと、若葉と、ゆかりと、小桜さんだけ。


数えられる程度しかいない。


那美は、小学校の頃から私の小説を読んでくれていた。


私にとって、数少ない読者だった。


小説を、公開するつもりはなかった。


きっと馬鹿にされる。


皆に笑い者にされる。


クラスで孤立している私が小説を書いているなんて、『メガネにおさげ』と同じくらい笑えるネタだろう。


きっと、ずっとないだろうと、そう思っていた────。