それをまさか、今日初めて会った先輩に言われるなんて思わなかった。
「美玲ちゃん、すごく綺麗な音出してるのにもったいないよ。この曲、アルトサックスのメロディも多いし金管楽器より目立つから、自分が1番!て思って演奏していいんだよ?」
「…自分が、1番」
「そう。誰かに遠慮して小さくしてるなんてダメだよ。その透き通った綺麗な音はもっと前に出さなきゃ!」
…そんなこと言われるなんて思ってなかった。
誰も私の音なんて聴いてないって思ってた。
私は涙ぐんで、何も返せなくなってしまった。
どうしよう…練習中なのに。
「…ごめんね、言うか悩んだんだけど、言うね。
美玲ちゃんが自信なさげに演奏してるのは、部員が原因?」
「……!!」
ドキッとした。
なんで?そんな、周りにわかるほど露骨ないじめではなかったはず…。
表立って悪口なんて言わないのだから。



