「美玲ちゃんって、あんまり肺活量ないタイプ?それとも、あえて小さく吹いてる?」
ドキっと、した。
誰かに指摘されるなんて思わなかった。
「え…と、以前、音が大きすぎるといわれたので。指示より気持ち小さめに吹いてます。」
これは本当の話。
合奏の時に顧問が私に言ったのだ。
『楯山、全体的に音がうるさい。部長の音の邪魔してるから音下げて。』
『…はい。わかりました。』
私は、アルトサックス。
小桜さんは、吹奏楽の花形であるトランペット。
少人数吹奏楽においてどちらを優先するかなんて明確で。
どちらも大事だし、部としてひとつの演奏を作り上げていく上でパートとして捨てられるものなんてない。
音楽というジャンルが好きで、楽器を演奏している間は嫌なことを忘れられると思っていた私にとってそれはとてもショックな出来事で。
それ以来私は演奏指示より1段階気持ち小さめで演奏することが多かった。



