あれから、私は部活には顔を出すものの、休憩時間にはトイレに引きこもるという生活をしていた。
夏休みに入った為、部活でしか顔を合わせないのだから大丈夫だと思ったからだ。
練習でミスさえしなければ顧問は何も言わない。
小桜さんの音程がずれていたって、私が合わせればそれでいいのだ。
曲の雰囲気に合っていれば、それで。
部活中はBOTになる。ただ、それだけ。
そして私は今日、人生で数少ない勇気を出す。
「ねえ、来週の3日って空いてる?」
「3日?て、美鈴の誕生日?だよね?」
「うん、用事、ある…?」
友達と誕生日を過ごしたことのなかった私にとって、誘うのはかなり勇気が必要だった。
断られたらどうしよう…そのことだけで頭がいっぱいだった。
ゆかりは少し考えるそぶりを見せたが、すぐに笑顔になり、「そしたらさ、」と切り出した。
「毎年家族で花火大会に行ってて、今年は丁度その日なんだ。ね、よかったら美鈴も来ない?」
「え、私も行っていいの!?」
「もちろん!ダメだったら誘わないよ」