その後、秋吉さんから謝罪の言葉を聞くことはなかったけど、海音が立ち回ってくれたおかげで、1ヶ月もしないうちに私は仕事に復帰できた。

 何があってもイラストレーターの仕事を捨てたくなかったのは、きっと、この仕事を通して海音と深いつながりを持てる予感がしていたからだと、今になって思う。


 心配していた流星も、あれからじょじょに精神的なものからくる声帯の不調を回復し、声優としての活動を再開したと聞いた。

 初仕事として私がキャラクター原案を手掛けた劇場版アニメの声優として流星の出演が決まったことを、海音が教えてくれた。


 これは編集長に聞いた話。

 私がイラストレーターとして活動を再開させた頃、海音は出版社を通して流星に会ったそうだ。そこで、流星の気持ちを癒すようなことをしたのだとか……。詳しいことは本人達にしか分からないけれど。

 私が流星のことで気に病んでいるのを見て、放っておけなかった。海音は編集長にそう言っていたらしい。

 自分の担当するイラストレーターだけでなく、分野違いの声優のやる気まで復活させるなんて、海音は本当にすごい人だと思ったし、そんな彼にますます人としての魅力を感じた。


 秋吉エリカさんは、前に所属していた出版社とは別の大手出版社で漫画家として再デビューすることが決まった。おかげで、海音に絡む暇がないくらい忙しいのだとか。

 恋愛より仕事に打ち込みたい。そう言い、彼女の方から海音との関わりを絶ったそうだ。

 彼女が広めた私の盗作疑惑は、まだ完全に消えていない。ネットには永遠に残り続けてしまうだろう。でも、もう恐くない。


 盗作騒ぎの件を知り、モモはすごく心配してくれ、同時に胸の内を語ってくれた。

「前に、アイデアが浮かばないって相談のメールくれたよね?私、あの時すごい悔しくてイライラしてた。まさに贅沢な悩みじゃん!って。ミユの才能がうらやましくて、ちゃんと話聞いてあげる気になれなかった……。ごめんね。

 でも、ひがむのはもうやめた!人を嫉妬したら、自分はそれ以上上には行けないって認めてるのと同じだし、今までの努力を自分で否定するみたいで悲しいし。

 絶対に諦めない。私、夢を叶えてみせる!いつかミユと同じ目線で話せるクリエイターになる。上ばかり見たらキリないもんね。自分を大切にする!クサったら負けだしね!」