呼び出された駅に行って
しばらくしたら智ちゃんが来た。

最初は再会の挨拶をして…
智ちゃんが『タバコ買って。』なんて
言うから、「いいよ」って、
変わらない彼のセブンスターを
自販機で買ったんだ。

で、人目につかないところに
二人で座り込んで、
そこから切り出される厳しい本題。

『どうする?』

「どうするって言ったって…
男は差し出さん、それだけは確か。」

『じゃあ、お前が皆にまわされるか?』

「私なんか、まわして
アンタら楽しいん?」

『楽しいとかじゃなくてケジメ。』

「まわされるのはイヤ。」

『じゃあ、A/V(Hビデオ)出る?』

「絶対、イヤ。」

『イヤでは済まん。
俺、一応、相談のってやりよんよ?
選べ。それが嫌なら金、30万』

300円のアイスを突っぱねて
ケジメが30万…あくどすぎる。

元々、そこの暴走族の悪名は
高かったけど身をもって知る…。

「30万は無理よ。」

『働く店、紹介してやろか?』

「怪しい店じゃなかったら。」

『怪しい店じゃなかったら、
だいぶ長い間、働かないかんよ?』

「大学あるから、無理。
1ヶ月したら戻らないかん。」

話は平行線だった。

『お前、あれもこれも嫌って
何しに出てきたん?』

その時、私は覚悟を決めた。

言われっぱなしは、やっぱり
性に合わなかったんだ。

「10万なら払う。」

『10万じゃ足りん』

「10万なら払う。
10万以上、びた一文払わん。」

『それじゃ、だめ…』

「後はどうにでもしたら?
でも10万以上は、払わん。」

断固として意見を貫いた。

この時の、智ちゃんとの
やり取りは出会った時のホテルでの
出来事を思い出させた。
(智ちゃんの場合③裏の顔?参照)

あの時も、こうやってもめて…
怖かったけど、
覚悟決めて言い返したんだ。

結果も同じ。

『解った。10万で良いよ。』

智ちゃんが、折れてくれた。

やっぱり根はイイ人。

向こうも欲張って手に入らない30万より
確実に手に入る10万の方が良いだろう
と、思った私の一か八かの賭けだった。

それでも、10万でも私には
きついなぁと、思っていた。

話はついて、それから、
少し場所を変えてまた座り込んで…
智ちゃんと世間話みたいなことしてた。

夕方も過ぎ、辺りは薄暗くなってきた。

会話の所々で、一応、
智ちゃんが私を心配して
くれてるのが伝わってきた。

『お前、あの男はやめとけよ。
女1人で来させるような男はダメだ。』

「わかってるんだけどね。」

まぁ、私的にはその事よりも
普段の浮気グセの方が
問題だったんだけども…。

あの時からしたら、智ちゃんと
こうして話せるのは夢のようだった。

やっぱり、かっこいいと思った。

その時、時間がかかりすぎてると
心配した大輔から、私の携帯が鳴った。

「うん、大丈夫よ、世間話しよった。」

横で智ちゃんが『男?』って
聞くから「うん」ってうなずいたら…

『かわって…』って
彼氏の大輔と、大好きな智ちゃんが
電話でしゃべるって…
なんか不思議な光景だった。