「わかった。」


秀兄は返事をしたけど、

俺のほうを向くことはなかった。


ただ前を見て、

そう言った。


車が動き出し、

見慣れた町の景色が

窓の外を流れていく。


静かになった

脳の中の部屋に

音は入ってこなかった……。


景色に、

思い出が浮かぶ。


小さく…

弱く…

うっすらと…。


車は学校に近づいて行く。


思い出も、

少しだけ鮮明な物に

変わっていく。